風流人日記

医王整体院 院長のblog

鍛えるより、しなやかさを

Inukaki01

 長い梅雨が明け、夏の高校野球が始まりました。灼熱のグラウンドで熱戦を繰り広げる球児たちを見ていると、よく鍛えられた心身のたくましさに感心します。

 今日はそのからだを鍛えるということについて考えてみたいと思います。

 椎間板ヘルニアだから、腰が悪いから、筋肉を鍛えて骨に負担がかからないようにしなければならない、ということをよく耳にします。テレビで聞いたり、病院でそう説明を受けて、言われたとおりにがんばって筋肉を鍛えている方も多いことでしょう。

 でもこれは問題ありと言わざるをえません。まず痛いときにそんなことをするのはとても苦痛です。そりゃそうですよね。痛くて動くこともやっとの状態で筋肉トレーニングなどできるわけがありません。無理してやると、ますます痛みが増します。

 もうひとつの重大な問題は、痛みの原因が椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄といった構造的なものだとする考え方です。もし構造上の問題が痛みをひき起しているなら、問題のその構造自体を早く治さなければなりません。でも余程のことがない限り、構造異常を治すための手術をしましょうということにはならず、ちょっと様子を見ましょうといわれることが多いですね(もっとも、なんでもかんでも手術しましょうでは困りますが)。

 では様子を見ていると構造異常がひとりでに治るとでもいうのでしょうか?そんなことはありえませんよね。それでも数週間で痛みが消えていくことがほとんどです。

 なぜでしょう?

 それは痛みの原因が構造異常にあるのではなく、筋肉そのものにあるからです。筋肉というのは骨や椎間板などの変形と違って、常に状態は変化します。疲れがたまると凝り固まったり、お風呂に入るとほぐれたり、というぐあいに。痛みが起こっている筋肉は、何らかの原因で一時的にこわばってしまったり、しなやかさを失ってしまっているのです。そのために筋肉にスパズムとよばれる痙攣が起こって痛むのです。ですから、痛いときにその問題の筋肉を鍛えるなんてことをすると、ますますその筋肉は硬くこわばってしまいます。だからそんな状態のときに必要なことは、筋肉を鍛えることではなく、筋肉を休めること、そしてほぐして和らげることなのです。そこを間違うと、なかなか痛みが取れないのです。

 では、痛みが取れたら、また次に痛みが起こらないように筋肉を鍛えておけばいいのか?という疑問が出てきますね。結論から言うと、もちろん運動不足は困るのですが、スポーツ選手でもない限り、だからといってそんなに歯を食いしばって鍛えることはない、と私は思っています。というのも、だいたい一生懸命鍛えようとすると、頑張り屋さんはつい無理をしてしまうのです。これでもか!いやまだまだ!と、どんどんエスカレートしてしまいます。そうすると、結局疲労がたまって硬くなり、スパズムの起きやすい筋肉になってしまいがちです。決して鍛えてはいけないとはいいませんが、心地良さを感じるくらいのトレーニングはいいとしても、イメージとしては「鍛えるよりも、しなやかな筋肉にする」というほうが、無理なく長続きするのではないでしょうか。そのためにはよく身体を動かすとことと同時に、一日に最低でも一回は動き過ぎて疲れのたまった、あるいは運動不足で凝り固まった筋肉をゆっくりストレッチしたり、ほぐしたりして緊張をゆるめることが大切です。

 もうひとつ重要なことは、あまり腰痛をなんとかしなければとばかり考えずに、ウォーキングでもストレッチでも、運動そのものを気持ちよく楽しむということです。それが一番ストレスを溜めないよい習慣になっていく秘訣だと思います。

 いずれにしても、ときどきからだにご褒美を与えるというか、からだが喜ぶことをすることが、元気でしなやかなからだに保つコツだと思います。

 ストレッチやリラクゼーションの方法は、また回を改めてお伝えしたいと思っています。