風流人日記

医王整体院 院長のblog

腰痛の診断と治療の現実

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 先日NHKの「ためしてガッテン」という番組で腰痛のことが放送されました。テレビの健康番組で腰痛を取り上げるのはよくあることで、それだけ腰痛で困っている人が多いということでしょう。

 たまたまその日、新聞でその番組のことを知ったので、「まあ、また毎度のように同じことを繰り返し言うのだろうなあ」と思いながら見ていると、これがちょっといつもと様子が違っていました。何が違うかと言うと、「これまで腰痛の犯人とされてきた椎間板ヘルニアは、実は犯人ではなかった」「いままで言ってきたことは間違っていました」と、司会者が謝っているのです。

 まあ人のすることに間違いは付きものですが、でもこれだけたくさんの人が腰痛に悩んでいて、実際にヘルニアが原因だと診断されてその除去手術までした人も大勢いるわけですから、そういう人たちに申し訳ないと頭を下げることは必要だと思います。しかし、これはテレビ局としても苦渋の決断だっただろうと推察します。

 まあこれまでのことを考えると、そこまでは大きく前進したと認めるにしても、では真犯人はなにか、ということについてはどうも曖昧な言い回しに終わっていました。85%の腰痛は原因が特定できないとか、ストレスが原因だとか、どうも歯切れが悪いのです。たしかに腰痛だけでなく多くの病気にストレスが関与することは否定しませんが、せっかくそこまで言うなら、なぜストレスが痛みと関係するのかというところまで突っ込んで取材してほしかったと思います。

 いずれにせよテレビの影響は大きいわけで、もっとしっかりしてもらわないと困るのですが、これまでの常識を覆す番組を放送したことは多くの人にとって思い込みを捨て、考えを書き換えるチャンスだと思いました。そんなわけで、この機会に腰痛の真の原因について私の考えを書いてみたいと思います。 

 痛みがあって病院に行く。レントゲンやMRIなど検査をするが画像に異常がなければ「異常なし」と診断され、原因不明のまま、せいぜい痛み止めの薬と湿布を渡されるくらいで帰される。

 画像にヘルニアや軟骨のすり減りなどが写っていると、それが痛みの原因にされる。そして手術を勧められるか、薬を飲みながらしばらく様子を見ましょうということになる。

 ほとんどの病院での腰痛などの診断・治療の現状はこんなところではないでしょうか。

 要するに、画像に異常が見つからなければ診断がつかないのです。しかし、本当の痛みはレントゲンやMRIには写りません。

 なぜならば、ヘルニアがあっても痛くない人がたくさんいます。

 健常者(痛みのない人)でも20代~50代で半数近く、60代~80代になると8割以上の人に椎間板にヘルニアなど何らかの変性が見られます。また反対に、画像になにも写らない、異常がないのに痛みを訴える人もたくさんいます。

 ヘルニアや軟骨の状態だけを見ていても痛みのことはわからないのです。これは診るところを間違えているとしか考えられません。

 ではどこが、なぜ痛むのか?

 これは痛みの生理学を学べばわかります。

 痛みというものは、末梢神経先端の受容器(センサー)が何らかの異状を感知し、その情報が電気信号として神経を伝わり、脳に達するのです。神経の途中(通り道)には受容器(センサー)がありませんから、途中のどこかでヘルニアなどの圧迫を受けたとしても、そこから電気信号が発生することはありません。

 ほとんどの場合、痛みがあるということは、その痛みを感じている部分に「発痛物質」というものが出ています。それを受容器(センサー)が感知し、その情報が脳に送られるのです。

 「発痛物質」が出てる場所は、押さえると痛みがあり、「圧痛点」と呼ばれています。圧痛のある筋肉はこわばりがあり、その部分を押したり動かしたりすることで痛みを感じるのです。

 これがほとんどの筋骨格系の痛みの実態で、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)と呼ばれています。ですから治療は、筋肉内の圧痛のある箇所の発痛物質を取り除く処置をしなければなりません。

 治療法については次回以降、書いていきます。