悩みを手放す
今あなたを悩ませている問題はとてもやっかいで、簡単にそれから逃れることは難しいでしょうが、その悩みごとからちょっと距離を置くことはできると思うのです。
”悩む”というのは、嫌なことから距離が置けなくなった状況のことを言うようです。
ですから、自分と悩みとが一体化している状態から、ちょっとだけ離れて悩みを見てみる。つまり悩みを客観化するのです。
そうすると、あまりにも近過ぎて見えなかったものが見えてくることがあります。
少しこれまでと違った見方ができるかもしれません。
自分の顔はあまりにも目と近過ぎて直接は見えませんよね。鏡に映してみて初めて、おやっ今日は疲れた顔をしているな、あるいはけっこういい顔してるなどと知ることができますね。(思い込んでいた自分のイメージと違うことに気づきます。)
悩みと一体化してしまっては、悩みのサークルの中で考えが堂々巡りするだけです。そして頭の中が悩みで埋まってしまい、自分の世界をどんどん狭くしていきます。
ちょっと距離を置き、いろんな角度からその悩みを見つめ直してみると、いい解決法が出てくる可能性が高くなります。
そのためには一人で抱えこまないで誰かに話してみることです。話すということは、放す(手放す)という意味でもあります。悩みや問題を自分の手からちょっと放してみるのです。そしてその問題からちょっと距離を置いて、聞き手とともに眺めてみるのです。
とはいっても、なかなか人には話しにくいこともありますし、話す相手が見つからない場合もあります。そんなときは、その悩みや問題を書いてみるというのも効果がありそうです。書くことで問題を整理すると、意外な発見があったりします。また、悩んでいる状況ではとても感情的になっていることがほとんどです。感情を言語化するためには左脳が働き、それによって感情が鎮静するのです。書くこともいったん悩みを手放すことになります。
探しているものがなかなか見つからなくて困っているとき、肝心の探し物は見つからなくても、以前から探していた思いがけない別のものが出てきたという経験はありませんか?
考えごとでも同じです。いちずにそのことを考えていても一向に妙案が浮かばない。むしろ、考えれば考えるほど心ががんじがらめになって抜け道が見えなくなってしまう。そんなとき、お風呂に入ったり散歩をしたり、ちょっとそのことから離れてみると、いいアイデアがひらめいたりします。
どうやら、考え過ぎは思考の自由な働きをさまたげるようです。
ちょっと間を置いたり、しばらく寝かせてあたためることが大切です。
悩み事にどっぷり浸かっているばかりでは解決しないことも、そうして話したり書いたり、まわり道をする間にどうでもよくなったり、悩んでいることがバカらしくなったりすることがあるかもしれませんし、悩みに対する見方が変わってくるものです。
悩みごとから逃げるというのは負け犬のように思われるかもしれませんが、逃げるのではなく、ちょっと間と距離を置くのです。
ここで気をつけなければならないことは、悩みを眺めてみる時に、けっして「こんなことではいけない」「もっと前向きな気持ちにならなければ」などと考えず、ただ「ああ、こんな気持ちがあるなぁ」と認めて眺めているだけでいいのです。落ち込んでいる時は、なかなかポジティブな考えにはなれません。自分を責めることはありません。悩むことは決して悪いことではなく自然なことです。問題なのは悩みっ放し、あるいは悩みと自分とを一体化していることなのです。
こうして悩みや苦しみと「一定の距離」をとり続ける「こころの姿勢」を保つ訓練をしていると、感情は自分の一部分であり、すべてではないということがわかってきます。
「私」は「悩みや感情そのもの」ではないのです。
そのことを知ると、悩みをいったん自分から切り離し分だけ心が軽くなり、そこからまた一歩、歩き始めることができると思います。