風流人日記

医王整体院 院長のblog

新しい食養生

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 昔から養生の基本にはまず食養生があげられます。面白いもので、この養生の「養」という字にはすでに「食」という字が入っています。飲食は生命を養うためになくてはならないものですから、これをおろそかにすることはできないということでしょう。医食同源ともよく言われ、「医はすなわち食にあり、食はすなわち医となる」ということです。ただ、食が大切なのは誰もが重々承知しているはずですが、ついつい食欲という人間の最も大きな欲に負けて暴飲暴食をしてしまいがちなのが困ったところです。

 現代社会は情報化社会ですから、食に関してもありとあらゆる情報が飛び乱れています。トマトがカラダにいいとか、バナナでダイエットに成功したと健康番組でとりあげると、次の日にはスーパーでその食材が品切れになったりするのを見ていると、どうも皆がテレビに振り回されているような気がします。

 私が個々の食材に関する情報よりも、三大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質をどういう割合で摂取するかに興味を持つようになったのは、高雄病院理事長の江部康二先生の提唱されている糖質制限理論に出会ってからです。血糖値を上げるのは糖質だから、主食の炭水化物を制限しなければいくらカロリーをコントロールしても肥満やメタボ、糖尿病は治らないという新しい理論です。

 日本人の主食であるお米は昔から食べてきたものだから安心だと思われる方が多いと思いますが、果たしてその昔というのはいつの昔でしょう? さまざまな進化を重ね人類の祖先が誕生したのは遥か400万年の昔です。そしてその後399万年はほとんど糖質を摂らずに暮らしてきました。農耕が始まり、安定的に穀物が採れるようになり、それが主食になったのはせいぜいここ4000年のことなのです。それを考えると、元来人間の身体の仕組みが、米や小麦など糖質を主とする炭水化物を現代ほど多量に摂るようにはできていないという説に頷けます。血糖値が上がる状況など、まさに想定外なのです。つまりカラダのエネルギーシステムは変わらないのに必要以上に糖質を摂り、しかも昔と比べてどんどん運動量は減っているからこそ、糖尿病やアレルギー疾患、生活習慣病が増え続けているのも納得できます。

 これまでは肉や脂っこいものが肥満や糖尿病の原因というのが定説でしたが、最近では糖質が及ぼす影響のほうが大きいという研究結果が世界中から次々と発表されています。

 甘いものを食べ過ぎてはいけないとは、子どものころよく親に口やかましく言われたものです。それは砂糖菓子やケーキなど間食を控えればいいとばかり思っていましたが、その「糖質=甘いもの」というところに誤解の元がありました。実はスイーツよりも主食であるご飯やパンや麺類などのほうが圧倒的に糖質は多いのです。ご飯一膳を砂糖に換算するとなんと角砂糖17個分に当たるというのは衝撃的事実でした。ステーキ一枚よりもご飯一膳のほうが太りやすいということも、これまでの自分の中での常識を覆しました。「甘くない糖質」、恐るべしです。

 こうした考え方以前に、食養生の基本はやはり「腹八分目」と「よく噛んで」ということがあります。最近はよく噛まなくても食べられる柔らかい口当たりの良いものばかりが好まれる傾向にあります。また、これ一本で一日分の野菜が摂れるなんていう野菜ジュースもありますが、同じ野菜を摂るなら野菜そのものを食べたほうがいいのです。なぜなら、食べ物は口に入れて、よく噛み、呑み込んで、消化させる、というプロセスが大事なのです。よく噛むことによって唾液が混じり、胃や腸の働きを刺激し、消化吸収活動が活発になるからです。一口で呑み込めるお手軽なものより、時間をかけよく噛まないと食べられないものほど、身につくということです。

 ああ、やはり食べる話を始めると、とどまるところを知りません。今回はこれくらいにしておきましょう。腹八分目がよろしいようで、、。