風流人日記

医王整体院 院長のblog

情報戦争に巻き込まれないように

 アメリカの大統領がトランプさんに代わるとどうなることかと、世界中の人たちが不安を募らせているようです。トランプさんは就任したら直ちに戦争を終結させると言っていますが、自国ファーストの国が増えると国同士がますます対立し、そこら中で戦争が始まりはしないかと心配です。いやもうすでに世界のあちこちで実際に戦争は始まっています。領土や水や食料や資源を奪い合うために多くの人の命が犠牲になっています。

 さらにインターネットの発達で世界中の誰でもが情報を発信・受信をすることができるようになった今日、”フェイク情報”といわれる形のない武器によって平和な国の人々も頭と心は戦争状態にさらされている状況です。

 そしてもう一つの戦争は、世の中の変化のスピードの速さとの戦いではないかと思います。中でも情報技術の進歩が、私たちの体内時計とは比べ物にならない速さで進んでいます。本来の人の体のリズムはこんなに忙しいはずではないですから、情報技術の速い進歩についていこうとすれば、体のどこかに無理が生じることでしょう。

 人の情報の入り口は目・耳・鼻・舌・皮膚ですが、SNSをはじめとした昨今のネット情報はほとんどが目と耳から入るものばかりです。つまりそれはある意味で偏った情報であって、言葉や音以外の皮膚感覚や体全体から入ってくる情報はむしろ減っているのではないでしょうか。不快なものも含め体全体で味わう体験でしか、本物か偽物かを見分けることはできないと思います。それとは反対に、目と耳だけから入る情報はなかなか記憶として定着せず、ただ雑多な情報として頭が混乱したり不安を煽ったりするものが多いようです。しかも実際に自分の体で体験した情報に比べて、真偽が疑わしかったり、自分にとって必要のないどうでもいいことがほとんどです。

 だから時に意識的に目や耳という情報の入り口を塞いだ方が体にもいいのではないでしょうか。そのことに気づいている人も多いようで、瞑想やマインドフルネスがブームになっているのもその一つの表れでしょう。

 世界中から発信される情報は、あまりにも大量で、あまりにもスピードが速いですから、それに乗り遅れまいとして必死で情報収集していると、いつか体も心も疲弊してしまいますから、一旦さまざまなネット情報から離れて、自然の中に身を置いたり、心身の平穏を取り戻す時間が現代社会では必要になっているのです。

 

 これは何も情報だけでなく、モノについても同じことが言えそうです。今の世の中、便利です、快適です、暮らしが良くなりますと、ものすごいスピードで新製品が出たり、まだ使える物を買い替えさせようと、欲望に火をつけるCMで溢れています。

 中には誰もが買い求めたくなるヒット商品もありますが、まあほとんどは見かけが変わっただけで中身はそれほど違わず、今使っているもので十分というものが多いのではないでしょうか。

 経済学者の佐伯啓思さんが「経済成長主義への訣別」という著書の中で次のように警鐘を鳴らしています。

 私たちは経済成長が人々を幸福にするという実に大きな「誤解」をしている。思い込みだ。すでに到達してしまった豊かな社会でこれ以上の成長至上主義を続ければ、人々の「ふつうの生活」は破壊され続けるだけなのだ。

 この本が書かれて7年経った今、経済成長は行き詰まり停滞したまま、モノや情報だけは溢れかえり、いったい我々は何処へ向かおうとしているのか、暗中模索の状態です。

 もう一つ参考になりそうなことを載せておきます。

 

 1991年に宮沢喜一さんが総理大臣になられたときに、「経済大国から生活大国へ」という方針転換を示され、「生活大国五カ年計画」というプランを発表されました。それをコラムニストの天野祐吉さんが「広告批評」で、政府の発表したものは堅苦しくて読んでる途中で寝てしまいそうだからと、我々凡人にもわかるように次のように書いてくれました。

目指したい「生活大国」とは、

①国民の一人一人が、日々の生活の中で本当の豊かさとゆとりを実感できる国

②多様な価値観を実現するための機会が、みんなに等しく与えられる公平な国

③大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムにバイバイし、美しい生活環境のもと、人びとが簡素なライフスタイルで生活を楽しめる国

 

 どうですか?素晴らしいプランだと思いませんか? 金の亡者なら眉をひそめるかも知れませんが、私は大賛成です。それにしても当時の自民党には、こんな発想を持つ方がいたことに、今となっては驚きです。

 しかし宮沢内閣はわずか一年余で終わり、こんな素敵なプランも計画倒れとなりました。その後も世界の先進国はどこまでも経済成長を目指して限りある資源を奪い合い、発展途上国との軋轢が強まるばかりです。しかし今、日本こそが率先してこの計画を実践し、人類の進む道を世界に示すべきだと思います。

 

 我々一般市民ができることなど限りがありますが、世界中に地球全体の未来のことを考え行動を起こしている人がたくさんいます。そんな人たちと手を繋ぎ、自分のできることを身近なことから実行していくしかないんじゃないでしょうか。

 

 日本では昔からの風習で、年末には身の回りを大掃除をして新たな環境と気持ちで新年を迎えたものです。最近はそんな風習も過去のものになりつつありますが、新しい習慣として、情報の「暴飲暴食」をやめ、押し売りにNOと言い、情報もモノも減らして、スッキリした新年を迎えませんか?

 

 そして風流人としては、もう少しゆっくりと時間を味わいながら過ごしたいと思うのであります。