風流人日記

医王整体院 院長のblog

呼吸で身体と心を調える

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 前回は一番安上がりの養生法として「呼吸」をご紹介しましたが、今回は、ではどうすればいい呼吸ができるかについて書いてみたいと思います。

 「呼吸」という字は、まず「呼」つまり吐くという字から始まります。そして後に「吸」という字がきます。これは息はまず吐くことに始まるという意味が込められいるのだと思います。「はい、大きく息を吸って深呼吸をしましょう」ということをよく聞きますが、それでは「吸呼」になってしまいます。

 なぜ「呼」が先にくるのかというと、大きく吸うにはまず大きく吐かなければ十分吸えません。それもできるだけたくさん、残らず吐き出すことが大切で、そうすると肺の中が空っぽになってたくさんの酸素を吸えるようになります。吸うことにばかり意識していると、吐くことがおろそかになり、十分吐ききれないために、ついつい上っ面だけの浅い呼吸になってしまいます。ギブ・アンド・テイクという言葉がありますが、得るためにはまず与えなければなりません。呼吸もそれと同じで、吸うためにはまずたくさん吐かなければなりません。テイクばかり期待していてもいい結果は生まれないのです。

 理屈ばっかりになってしまいましたが、ではさっそく深呼吸をしてみましょう。といっても、その前にもう一つしなければならないことがあります。カラダの力を抜くということです。でも実はこの「力を抜く」ことほど難しいことはありませんね。ただ、この「力を抜く」ことと「呼吸」は密接な関係にありまして、力が抜けるといい呼吸ができますし、呼吸が良くなってくるとカラダの力も自然に抜けます。だからどちらからということなく、両方いっしょにやっていただくといいと思います。

 前置きが長くなりました。ここまで息を凝らして読んでいただいていたかもしれませんが、ようやくこれから楽ないい呼吸ができるようにレッスンしていきましょう。

 姿勢は座ってでも寝転んででも立ったままでも結構です。いつでもどんな姿勢でもできる。これが呼吸法のいいところです。できるだけ窮屈でない楽な格好で、まず自分の呼吸に耳を傾けます。そうです、自分の呼吸を聴くのです。静かに呼吸をしていると音はしないかもしれませんが、自分が吐く息、そして入ってくる空気を感じてください。まだ意識して深い呼吸をする必要はありません。

 まず一分間、自分の呼吸を聞きながら、何回くらい吐いたり吸ったりしているのかを数えてみてください。それだけでもう、あなたの呼吸は普段よりゆったりとした深い呼吸になっているはずです。こうして自分の中から出て行く息、入ってくる息を追いかけ、呼吸に意識を持っていくだけで、呼吸は穏やかになるのです。おそらくこの間、自分の呼吸を聴くこと、数を数えることに夢中で、他のことはあまり考えていないはずです。晩ご飯のことがチラチラ頭に浮かぶ人は、ちょっと集中できていませんね。呼吸に集中し、自分自身が呼吸と一つになると、「いま・ここ」に居続けられるのです。

 一つひとつの呼吸は、いまこの瞬間でしかできません。さっきの呼吸のやり直しもできないし、明日は忙しいからその分を今しておくなんてこともできませんよね。ですから、呼吸に集中し「いま・ここ」に居続けると、余計な心配や不安が消え、心も穏やかな状態になれます。明日は明日の風が吹く、です。そして、静かな深い呼吸は身体中に新鮮な酸素を届け、全身の細胞一つひとつが活性します。

 これが呼吸の効果、「調身・調息・調身」です。

 呼吸法にはさまざま方法があり、それぞれ深いものですが、今回は難しいことはやめておきましょう。まずは先に書いたように、自分の呼吸を聴くことから初めてください。「調息」というのを私は「聴息」と読み替えています。静かに呼吸を聴けば、必ず自然に穏やかないい呼吸になり、カラダの力も抜けていきます。