朝晩めっきり涼しくなったある日の夜、どこからか時折チッチッチッと虫の鳴き声が聞こえてきました。
おお秋も深まってきたな、中秋の月といい、なかなか風情があっていいではないかと、ひとり悦に入っていた翌日、ふとしたことで壁にかかっているカレンダーを外すと、突然声の主が現れて驚きました。
こんな間近で鳴いていたのか。
庭から紛れ込んだコオロギかなと思いましたが、いや鳴き声からするとコオロギでもないしと調べてみると、どうやら闖入者の名はカネタタキらしい。
私には鐘を叩く音には聞こえないが、耳にやさしいいい音色です。
犬がいなくなった我が家は、アゲハ蝶やら秋の虫やら、このところいろんなものが住み始めました。
チッチッチッ。
ときどき聞こえるかろやかなライブ演奏に聞き入っていると、しだいに尖った気持が和らいできます。
究極のリラクゼーション・サウンドです。
はたしてこの無料の京都公演はいつまで続くことでしょう。
そのカネタタキの声を聞きたい方はこちらからどうぞ。
******
その後も予期せぬ秋の闖入者カネタタキは部屋に三日ほど居続け、このところの涼しさにほっと一息ついている夏バテのカラダを楽しませてくれました。
そのとき、ひとつおもしろい発見をしました。
上にリンクを貼っておいた「カネタタキの声」ですが、生演奏が聞こえてくるときに、それに合わせてそのリンク先のデジタルな音を流してみると、なんと本物が反応するのです。
たまたまかもしれないが、確かに高い確率で返答します。
考えてみれば当たり前のことかもしれません。
虫の声もなにかのメッセージなのですから。
求愛の声か、そろそろ飯の時間だよ~と言っているのかは知りませんが、ともかく仲間に何かを伝えているのは間違いないでしょう。
そんな時にコンピュータを使って紛らわしい音を出すのは迷惑かもしれないが、近頃のデジタル技術もたいしたものだと妙に感心してしまいました。
そんな悪戯をして遊んでいると、カネタタキの鳴き声がコンピュータのスピーカー以外に、あちらこちらいろんな方向から聞こえるようになってきました。
最初の一匹が部屋の中をうろうろ放浪しているのか、それとも仲間が集まってきたのか。
いよいよステレオサウンドです。
どちらにしても、家の中に居ながらにして、間近に秋の虫の音を聴くことができるということは、究極の贅沢です。
しばらくこの生演奏とデジタル音のステレオ輪唱で風流な秋の夜を楽しませてもらいました。