風流人日記

医王整体院 院長のblog

ゆっくり ーー気功との出会いーー

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 私が気功から教わったことは、「ゆっくりでいい」ということです。

 それは入院しなければならないほど酷いアトピー性皮膚炎で苦しみ、それがようやく治りかけていた頃でした。闘病生活の中で偶然気功の本に出会い、その内容に強く惹かれたのです。おそらくそれは病気を通じてそこへ導かれ、病気になる以前の生活で忘れていたものに気づかされたという、かけがえのないご縁を感じたのだと思います。

 そのあと気功を本格的に学び、気功独特のゆっくりとした呼吸や動きをするうちに、それまでの生活ではなにかに追われるように先を急ぎ、一瞬たりともどっしりと腰を据えて過ごすことがなかったことに気づきました。 ゆっくりすることが怖かったのです。ゆっくりしていると叱られるのではという他人に対する恐れ。こんなスピードでは誰かに先を越されるという自分自身に対する焦り。そんな気持ちが一時も立ち止まることを許さず、走り続けさせたのでしょう。

 気功を始めた当初は、ただそのゆっくりしたリズムが心地よく、日常のスピードとは違った時間を過ごせることが喜びでした。なぜゆっくりなのかと考えだしたのはずっと後のことです。ゆっくりが身についてくると、いろんなことが見えてきたのです。それまで速すぎて見過ごしてきたことや、別の生き方が。そして気功のゆっくりした動きは、「急がなくていい」ということを教えてくれたのでした。焦る気持ちで急いで何かをつかもうとしてるうちは、結局なにも見えていないし、得るものもなにもないということです。

 もうひとつ気功が教えてくれたことは、考えることをやめたときに気づくことがある、ということです。それまでは一生懸

命頭を使って考えなければいい答えを得ることができないと思っていたのです。しかし、気功は考え過ぎがいかによくないかを教えてくれました。

 頭を使うということは、頭の中が言葉で一杯になることです。ときには考えることをやめて脳を休めなければ、あふれんばかりの言葉でパンクしてしまいます。そんな状態の脳は考えることができないどころか、新しい何かを受け入れたり、感じることすらできなくなってしまいます。冷静な判断も、まずは純粋な感性からしか始まりません。

 ありのままに感じることができなくなると、正しい判断すらできなくなってしまいます。そこからいろんな間違いが始まります。人とのコミュニケーション、自分の身体の状況を把握すること。こんな人間としての基本となる大切なことがうまくいかなくなってしまうのです。

 情報の氾濫するいまの社会では努めてときどき頭を空っぽにしなければなりません。

 もう情報を集めるよりも情報を選択し、整理するほうが大切な時代になっているのです。闇雲に情報を集めても、それをうまく使いこなさなければ意味がありません。ただの物知りだけではクリエイティブな生活はできません。自分に必要な情報を選択し、不要な情報をどんどん捨てていかなければ、情報の波に飲み込まれてしまうばかりです。

 流行に乗り遅れる、時代に置いていかれるなどと言いますが、人が生きるという本質的なこと、人と人との絆や生きる上で大切なことは、そんなに急激なスピードでは変わりません。大事なことは、新しいものばかりに飛びつかず、先を急ぎすぎず、しっかり二本の足を地につけて「いま・ここ」を感じることではないでしょうか。そこにはたくさんの大切な気づきがあります。

「ゆっくり」のなかに大切なものを見つけていきましょう。