風流人日記

医王整体院 院長のblog

慢性痛

081113p3715_2 いわゆる慢性痛という、なかなか取れないしつこい痛みがあります。痛みは記憶として脳に残ります。転んでしりもちをついたときの痛み。段差で足をくじいて捻挫したときの痛み。かがんで床にあるものを取ろうとした時に起きた腰痛。皆さんよく「電気が走ったようだ」とおっしゃいます。その時のことを思い出すと顔をしかめたくなるような痛みですね。

 普通こんな痛みは数日から数週間で治まります。しかしどういうわけか本来の傷は治っているはずなのに、痛みが持続することがあります。

 これはどうも神経が痛みを記憶してしまっている可能性があるようです。治ってしまえば脳は過去のこととして忘れてしまいますが、脳の記憶やケガの現場の治癒とは関係なく、神経が痛みを覚えてしまうために、いつまでも痛みが残るということです。

痛みを感じると筋肉は自動的に緊張します。例えばぎっくり腰になった時、身体が動かなくなります。これは、傷めた筋肉を保護するために筋肉を緊張させて自然のコルセットを作るのです。身体の自然な反応なのですが、問題なのは、いつまでも動かさないでいると、筋肉の緊張が取れにくくなってしまうということです。

 ですから、少し休んだら、まだ痛みが完全になくならなくても動ける範囲でできるだけ動くことが大切だと思います。痛みを怖れていつまでも安静にしていると、そのあいだに神経が痛みを記憶してしまうのではないかと考えられます。非活動的になればなるほど痛みは慢性化し、さらに痛みの部位が広がる可能性があります。いわゆる「痛みの悪循環」です。

 

焚き火をする時のことを考えてみますと、最初は薪をいくら積み上げてもすぐには火がつきませんが、ひとたび燃え出す と周りからどんどん酸素を吸い込んで、薪をくべればくべるほど勢いよく燃え上がります。

 これは炎が燃えることによって周囲に空気の流れができて酸素が流れ込み、さらに燃え上がるというプラス方向の循環が起きるためですが、痛み系もそのような循環が起きやすいしくみになっているということなのです。

「痛みを知る」 熊澤孝朗・著 より

 このように痛みもひとたび広がり出すとなかなか消火することが難しくなりますから、初期消火が大切なのは言うまでも

ありませんが、悪循環に陥らないためには、脳に「動いても大丈夫」という安心のメッセージを送る必要があります。

 それには、まず動かせるところを動かせる範囲で動かす。そしてできるだけ早く普通の日常生活に戻って、脳に自信を取り戻させることです。

 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、構造的な異常を怖れることはありません。ヘルニアがあっても、背骨がズレていても、痛みも感じず普通に生活している人はたくさんいます。腰痛に限らず、痛みの元はほとんどの場合筋肉です。ですから、そういった情報によって脳を安心させるとともに、できる限り筋肉をよく動かして血流をよくしていくというふうに、脳と身体の両面から働きかけることが肝心です。ゆっくりとした気持ちよさを感じる運動や、温泉、マッサージなど、なによりも心身ともにリラックスすることが大切だと思います。