風流人日記

医王整体院 院長のblog

「治る」とは?

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 「治る」というのはいったいどういうことなのでしょうか? 転んで膝小僧を擦りむいたり足首をひねったりして怪我をしたところは、適切な処置をすればたいていの場合は時間が経てば治ります。ところが、傷口が治っていても、いつまでも長引く痛みや不快な症状が残るケースも少なからずあるようです。特に腰痛などカラダの内部で起こった傷や痛みは、目に見えないだけにやっかいなところがあります。  このブログでも2008年11月に「慢性痛」と題して痛みのことを書いています。そのとき書ききれなかったことや、新しい情報を今回は書きたいと思います。

 治ることと治らないことには、どこにどんな差があるのか。それを考えるために、まず「治る」とはどういうことなのかを考えてみましょう。  痛みや不快症状があって日常生活に支障を来しているうちは、まだ治ったとは言えないでしょう。それがどんどん治癒していくうちに、そのことにあまり意識が向かなくなる。 つまりなにかの拍子にちょっとまだ痛みを感じることはあっても、症状を忘れている時間のほうが長くなっている状態を「治った」というのだと思います。  ところが人によっては、少しでも痛みが残っているうちは、まだ治っていないと考える人もいるでしょう。だからその基準は一概には言えないと思いますが、ここのところの線引きがその後の経過に差が出る気がします。少しでも症状が残っているうちは無理をせず、安静にしてやりたいことも我慢すると考えるか、多少痛みが残っていても気にしないでやるべきことをこなしていくか。これはその人の性格にもよるのでしょうが、前者の場合はどちらかというと痛みが慢性化しやすいと言えそうです。  最近の研究では、慢性痛は脳を含めた中枢神経系に変化をもたらし、本来なら痛みとは感じられないような軽い刺激や、寒さや気圧の変化、また感情が昂ぶったりいやなことを思い出したりというきっかけでも痛みが起きたりすることがわかっています。  このことからも、痛みを感じるたびに強い不安を覚えたり、悲観的に考えたりすることを繰り返していると、脳の痛み系回路に悪影響を与え、治りを遅らせると考えられます。つまり心理的な要因が回復を妨げる大きな一因のひとつであるということです。

 本来、人のからだには痛みを抑制したり調整する能力が備わっているのですが、その神経回路が恐怖感や不安、抑うつ傾向によって歪められるらしいのです。  痛みや不快な症状があるときは、当然気分も落ち込みます。痛みが消えれば気持ちも上向きます。だから、痛みと気分は相互的だと言えます。しかし、いつまでも痛みを気にし、落ち込んだ気分を引きずって絶望的になったり非活動的になっていると、脳にも悪影響を与えるというわけです。ですから、もともとの痛みの原因となるところは治癒していても、いつまでも痛みを引きずる結果になります。  1%でも痛みが残っていればダメという完璧主義者はその点、回復力に差が出やすいかもしれません。多少の痛みがあっても、したいことをし、うまく気分転換ができる人は慢性化しにくいのでしょう。ですから、近年の痛みの研究から言えることは、できるだけ痛みは早期に処置すること。そして、慢性化した場合は、薬や身体的治療だけでなく、カウンセリングや認知行動療法などの心理的アプローチも同時に行っていくことが大切です。

 急性期の痛みは危険を教える大事な情報ですが、慢性期は無意味な痛みが多いようです。不必要な痛みに困らされることになるのです。  その痛みにこだわり、四六時中痛みのことを考えていても、良い結果はでないのです。なにごとも、「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですね。