風流人日記

医王整体院 院長のblog

痛みと記憶と感情

92aadchc  慢性的な痛みは、どうも「記憶」と「感情」が深く関わっているようです。
 数多くの痛みをかかえた患者さんをみていると、それが実感として分かります。
「うつ伏せに寝ると必ず手がしびれるんです」「夜中にトイレに起きる時、いつも腰の痛みを感じます」など「〜〜をすると、必ず〜〜が起こる」というスタイルです。
 筋肉にダメージがある場合は、特定の動作によって関連する筋肉を収縮させることで痛みが出ますが、上のようなケースでは特にその筋肉を運動させなくても起こることがあります。
 これは脳が過去に経験したつらい体験を記憶していて、同じ状況になるとその記憶を思い起こし、身体に同じ反応を起こすのでしょう。そのときに抱いた感情が強ければ強いほど、反応も強く出るようです。
 たとえば、頭の中でむかし恐いめにあったことを思い出すだけで、アドレナリンが分泌され、交感神経の緊張が起こります。実際に目の前に恐ろしい状況がなくても、想像するだけで身体に反応が起こるわけです。
 いつも症状のことが頭から離れず、動作することに不安と恐怖感を持ち続けていると、どうなるでしょうか。
 慢性痛では、急性期にダメージを受けた箇所が治癒していても、あるいは実際の痛みの程度が軽減しているはずであるにもかかわらず、こうした脳の認知によって痛みが増幅されたり持続されるケースが多くみられます。

 痛みが慢性化すると、そのような脳の記憶と感情をリセットする必要があります。
 「こうすればああなる」という思い込みをくり返すことによって、神経細胞同士のつながりが強固になるわけで、いわゆる「条件付け」が出来上がります。こういった悪循環を取り除かないかぎり、痛みの現場だけを治療していても治りが悪いのです。
 これには、患者さん自身が受け身の治療ではなく、自ら積極的にかかわってもらう必要があります。前回の「脳細胞は生まれ変わる」で書いたように、肯定的な思考や好ましい行動をくり返すことによって、過去の記憶を塗り替えるのです。

 したがって、痛みは慢性化する前にできるだけ早くとってしまうことが大切なのですが、慢性化した場合でも、脳の学習効果によって克服することは可能です。
 あきらめることはありません!