風流人日記

医王整体院 院長のblog

鳴かぬ蛍が身を焦がす

Qwitgz2m  近頃、前向きにとかポジティブ志向がもてはやされ、ネガティブな感情を持つことがとても悪いことのように言われます。しかし、どんなにいつもポジティブな気持ちでいようと思っても、そううまくはいきません。私たちの人生行路には大きな荒波や数々の難関が控えています。仕事や人間関係や日々の暮らしの中で心の痛手を負って悲観的にならざるをえないことだって数多くあります。
 そんなときに「こんなことではいけない。もっと前向きに明るく」などと考えて辛く悲しい気持ちを心の奥に閉じ込めてしまっても、そうした感情は私たちの心から消えてなくなるわけではないのです。感情を封印してしまっても、それは態度として周囲に伝わりますし、はけ口を失って自分のからだにも悪影響を及ぼします。
 ですから、悲しい時には思い切り泣いたり、辛い時はその気持ちを誰かに聞いてもらうことが必要なのです。

 日本人は昔から感情の表現が下手だと言われています。奥ゆかしいとも言えるかもしれませんが、あまり感情を露骨に表すことはいけないことだと小さい頃から教え込まれているのです。それだけでなく、人間の心には傷つくことを怖れて、思い出すのも嫌なことを潜在意識下に押さえ込んでしまう防衛本能が備わっています。

 前向きに考えることは悪いことではありませんし、そんなプラス思考が必要な場合も多いことは確かです。しかし、かといって感情を押し殺してばかりいてもそれで将来が明るくなるとは限りません。しっかりとその時その時、悲しみや怒りの気持ちを受けとめておかなければ、未完の事柄としていつまでも心の奥に残ってしまうわけです。その時点で100パーセント完了することはできなくとも、ある程度まで感情を味わうと納得して次へ進めるものです。
 子供だって何がそんなに悲しいのかと思うほど思いっきり泣いた後は、あれはなんだったの?っていうくらい案外ケロッとしていることがよくありますよね。泣き疲れることも大切なのかもしれません。

 ポジティブが善でネガティブが悪などと決めつけてかかるのはよくありません。人間みなどちらの感情も併せ持っているのです。ネガティブな感情を否定し、どこかへ追いやろうとしても、気づかないうちに自分の心の奥深いところに溜めて、いつまでも引きずってしまいます。そんな感情が積もり積もって行き場を失い、からだのどこかに症状を出すことが多いのです。


 しっかりとネガティブな感情を受けとめ、辛いけれどもその感情を味わっておくことによってはじめて、また前へ向かって歩いていけるのではないでしょうか。

 あなたは時間をとってゆっくりと自分自身の本当の気持ちと向き合ったのは、いつが最後ですか?
 喜び、悲しみを誰かと共有したのはいつですか?