風流人日記

医王整体院 院長のblog

自分の感覚を大切に

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 前回の気功入門で書いた「考えるより感じることが大切」というところを今回もう少し詳しく書いてみます。

 現代は情報の時代と云われ、ありとあらゆる情報が世界中を飛び交っています。それは健康に関しても同じです。医学の進歩によってこれまで不治の病と云われていた病気の原因が解明され治療法が確立したという朗報から、未知のウィルスが発見されたといった恐ろしく不安を煽るような情報まで、人々の耳に瞬時に伝わってきます。もっと身近なところでは、家庭用の血圧計が普及して、その気になればいつでも自分の血圧を知ることができる。テレビでは、こんな食生活や暮らし方をしているとそのうちに大変なことになりますよなどと、人々を恐怖に陥れる番組が大流行りです。数え上げるときりがありませんね。

 健康管理のために血圧を測ったり、太りすぎないように毎日欠かさず体重計に乗ったり、テレビや雑誌でさまざまな情報を仕入れてよりよく暮らすことは、けっして悪いこととは言いませんが、そういった外から得られる情報よりも、もっと内側のつまり自分の身体の感覚を大事にしていきませんか。

 自分自身の感覚よりも外部の判断や評価にばかり目を向けていると、ますます自分の中に起こっていることに鈍感になります。つまり人から言われてみないと気づかない。いや、自分ではなんとなく変だなあ、とは感じているのです。でもあまりにも外に情報が多すぎるから、迷いが生じて自分自身では判断できず、ただ不安だけが大きくなるばかりなのです。知識・情報と生身の自分とのギャップです。

 昔はお医者さんが患者さんの身体を診るときは、聴診器を胸や背中にあて、口のなかを見たり痛いところを触ったりしました。それこそ裸のつきあいです。今のようにろくに患者さんの顔も見ず、いきなり「はい、レントゲンを撮りましょう」「血液検査をします」などということはありませんでした。

 医学の進歩、検査機器の発達によって、早期発見や救われる命があることは事実ですし、素晴らしいことですが、問題は数値や目に見えるものばかりに頼りすぎてはいませんかというところです。

 先日、宮崎で発生した口蹄疫も、マニュアルにそって判定したために初動が遅れ、伝染が拡大したようです。マニュアルは一見効率がいいようですが、実際に五感をフルに働かせ、自分で主体的に判断する能力がますます衰えます。

 当たり前ですが、人の身体の状態は皆が皆同じではありません。一人の人間のなかにおいても四六時中変化しています。ですから、情報をすべてを闇雲に信じるのでなく、状況に応じて自分自身の感覚を大切にしながら判断しなければならないと思います。それは間違っているかもしれない。専門家のアドバイスを受けなければならないかもしれない。しかし、一番自分をわかっているのは自分しかいないのです。太古の昔から、人間という生き物もいわゆる実感というものに基づいて生きてきたのだと思います。むろん五感以外になにも頼るものがなかったのですから、そうせざるを得なかったのでしょうが。その流れが続いていれば、人間の感覚はもっと鋭いものに進化したかもしれません。しかし、人類はそちらの道を採らず、機械など外部のモノに頼る方向に進みました。その結果がいま、身体と心(情報に翻弄される脳)の乖離という現象にまで発展しているのではないでしょうか? 

 便利さはますます生きている感覚を鈍らせるようです。

 健康で長生きしている人には医者に頼りすぎない人が多いらしいのです。人任せにせず、自分の感覚を大切にしている人なのではないでしょうか。